TKA・金属アレルギー症例
目次
TKA・金属アレルギー症例(増井)
症例 | 77歳、女性 関節リウマチ、変形性膝関節症 多種抗リウマチ薬にアレルギー |
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術前レントゲン・CT | 変形性膝関節症を認め、TKA(骨セメント1パックにアミカシン500㎎混入)を施行 |
術中・後経過 |
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術後レントゲン | |
経過 | 術後1週目頃より、術創から下腿にかけて発赤、光沢を伴う腫脹、自発痛/圧痛が出現 WBC10760/μl、好酸球2.0%、CRP5.76mg/dl、プロカルシトニン0.05ng/ml |
術後2か月 抗ヒスタミン薬:エピナスチン内服中 |
発赤・腫脹は軽減している |
別症例
症例 | 85歳、男性 変形性膝関節症 |
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術前レントゲン | |
術後レントゲン | 術後20日、術創にかけて発赤、腫脹を認める WBC6770/μl、好酸球15.7%、CRP3.08 mg/dl、IgE 1033U/ml |
金属アレルギー
- 金属はアレルゲンではない(直接、アレルギーを起こすわけではない)
- 金属から溶出した金属イオンが、人体が本来持つタンパク質と結合し、アレルゲンとなるタンパク質に変質
- 遅延型アレルギー反応(Ⅳ型):イオン化した金属が局所で蛋白と結合して抗原となり、感作リンパ球の標的組織となり炎症(ALVAL;Aseptic Lymphocyte-dominated vasculitis-associated lesion)を起こす
- 術後に全身性・難治性の皮疹:金属アレルギーを疑うことも重要
- 金属との接触部に起こる接触皮膚炎(部位によっては粘膜炎)が代表的
- 全身性皮膚炎:金属イオンが血流によって全身に運ばれて発生
- 金属アレルギーを起こしやすい金属:ニッケル、コバルト、クロム
- 全人口に占める接触アレルギーの割合:ニッケル13%、コバルト3%、クロム1%
- 女性の17%および男性の3%がニッケルアレルギー
- 通常、罹患者は女性に多く、ニッケルでは特にその傾向が強い
- Co、Crに感作される確率:20~25%、実際に発症率は感作症例の1/20
- TKA後の症候性金属アレルギー:4.8%、70%にCr, Fe, Niの交差反応
- 術後新規Cr感作例:70%は症候性、Crは要注意
- 診断:蕁麻疹などのアレルギー反応が起こしやすいという既往がない、長期間持続する皮膚症状、通常の治療で治りにくい、金属抜去後に速やかに症状が消退する、金属の構成成分に対してパッチテストが陽性に出る、末梢血に好酸球増加がみられる、などが挙げられる
- インプラントアレルギーに関するその他の症状:創傷治癒障害(特に、膝関節インプラント患者群において認められる)、疼痛、再発性滲出液、可動域制限および無菌性ゆるみ
- 術後の臨床成績には金属アレルギーは影響を与えないとの報告もある
- インプラント再置換:肩関節の再置換の0.9%、人工股関節置換の5.7%が金属感作(オーストラリアのジョイントレジストリー)
- 採血検査:好酸球/IgE増加、末梢血T細胞に抗原となる金属を曝露させて、増殖能を判定するリンパ球刺激試験(LST)の測定能が高い
- 治療
- ステロイド:プレドニン(5~30mg)ソルメドロール(パルス療法、500mg/日)
- メディエータ―遊離抑制薬:インタール
- H1受容体拮抗薬:ポララミン(第1世代)、アレグラ(第2世代)
- ステロイド外用薬