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上腕骨骨幹部病的骨折

上腕骨骨幹部病的骨折(増井)

症例 55歳、男性
上腕骨骨幹部病的骨折(腎癌、clear cell carcinoma)
術前レントゲン・CT 上腕骨骨幹部に骨破壊を伴う病的骨折を認める
術前MRI 橈骨神経(赤矢印)は腫瘍近位で内側から後方・外側へ走行し、腫瘍に近接している
切除縁計画と再建 *髄内釘挿入:姑息的手術(予後不良症例に施行)
*腫瘍内切除+髄内釘固定+抗がん剤混入セメント充填+(術後放射線照射)
*広範切除(WD<3cm)+内固定(LCP double plateあるいは髄内釘)+骨移植(腓骨/腸骨)または抗がん剤混入セメント充填
*広範切除(WD>3cm:In Situ Preparationあるいは橈骨神経切除)+内固定(LCP double plateあるいは髄内釘)+骨移植(腓骨/腸骨)
本症例の治療 *腎癌(clear cell carcinoma)の単発骨転移:広範切除術
*腎癌(clear cell carcinoma):hyper vascularなため十分な輸血をスタンバイ
*単一皮切で施行:LCPによるdouble plating
*広範切除(WD>3cm):一期的再建(骨移植:腓骨/腸骨)
 ・術中切除縁評価/In Situ Preparation(ISP)、橈骨神経外膜切除:橈骨神経外膜は薄い、橈骨神経の挙上が難しい、手術時間が長くなる、タニケットが使用できないため術中出血量が多くなる
 ・橈骨神経部切除:機能低下
*広範切除(WD<3cm):二期的再建、本症例
 ・機能温存(橈骨神経温存)
 ・二期的再建:再発のリスクがあり、病理切除縁評価と再発がないことを確認してから施行するほうが安全
 ・抗がん剤混入セメント充填
術中写真 Ollierの皮切を遠位に弧状に延長して広範囲に展開
筋皮神経を確認した後に上腕二頭筋(青矢印)を内側へよけ、上腕筋の上を腫瘍が露出しないように展開(黄矢印)する
イメージにて腫瘍を確認した上で1cm近位にて上腕骨を骨切り(黄矢印)する。遠位骨切り部を拳上し、橈骨神経に注意しながら、腫瘍を露出しないように後方から外側を展開する。イメージにて腫瘍を確認した上で1cm遠位にて上腕骨を骨切りして腫瘍を一塊として切除する。
イメージで上腕骨近位および遠位の正面を確認し、Narrow LCPを仮固定する
上腕骨正面にあてたNarrow LCPを近位・遠位それぞれLocking screw4本で固定する
橈骨神経(黄矢印)をよけて、上腕骨外側にNarrow LCPをあてがいLocking screwで固定する
骨欠損部に抗がん剤混入骨セメント(1パックにドキソルビシン50mgを混入)を充填する(橈骨神経:黄矢印)
術中経過 手術時間:2時間19分
出血量:856ml
術後2日目より自他動運動
術後レントゲン 橈骨神経(赤矢印)は腫瘍近位で内側から後方・外側へ走行し、腫瘍に近接している
術中経過 *腎癌(clear cell carcinoma):hyper vascular、十分な輸血をスタンバイ
*予後不良な症例:腫瘍はいじらずに内固定(髄内釘挿入:姑息的手術)
*予後良好な症例:辺縁/広範切除術
*内固定:LCP double plateあるいは髄内釘(力学的には強い)
*抗がん剤混入セメント充填:セメント1パックにアドリアマイシン40mg混入
*骨移植(腓骨/腸骨)