ペースメーカー治療
徐脈に対するペースメーカー治療
脈が遅くなることで不具合が起こる状態を徐脈と言います。
徐脈の治療に用いるペースメーカーは、簡単に言えば脈拍数を保証する装置です。脈が遅くなって心不全になるような場合には、最低心拍数を引き上げることによって心不全を治療します。時々脈が止まって意識を失うような場合でも、最低心拍数が保証されている限り失神することはありません。ペースメーカーは、心臓が刺激(例えば叩くなどの刺激でも可能です)によって収縮するという性質を利用して、電気の刺激で心臓を収縮させる装置です。刺激となる電気パルスはペースメーカー本体で作り出されますが、この本体は前胸部(鎖骨の下方)の皮下にポケットを作って埋め込まれます。この刺激パルスは、静脈を利用して心臓の内膜(心臓の内側を覆っている膜)に留置したリード線を通じて心臓に送られます。このリード線は、心臓の内部の心電図を監視するためにも利用されます。この仕組みを利用して、ペースメーカーを使用している患者様の不整脈監視ができる機種もあります。
ペースメーカーの植込みは局所麻酔で行なわれ1時間足らずの手術ですが、リード線の安定をはかるのに術後の安静が必要なため入院を必要とします。ペースメーカー本体は電池で作動しているため、電池の消耗前に交換が必要です。リード線は交換せず(容易にできない)、本体を取り替えます。こちらも局所麻酔の手術ですが、術後の安静は不要です。傷が治るまで約1週間の入院となります。
心不全に対するペースメーカー治療(心再同期療法)
心不全は、心臓の働きが弱ってしまった状態で、動くと息切れがしたり胸に水が溜まったりするため、日常生活が困難となってしまいます。その心不全の中には、心臓の動きがギクシャクすることが原因で十分に心臓から血液が送り出せなくなることが原因のものがあります。このギクシャクした動き(同期不全と言います)を、ペースメーカーによってスムースな動きに変えることによる心不全治療を「心再同期療法」と言います。これに用いる両心室ペースメーカー(CRT-P)は徐脈に対するペースメーカーとは異なり、左心室に留置するリードを接続するコネクターを備えています。左心室には右心房に戻ってくる冠静脈(冠動脈は心臓に酸素を届けますが、この血液は冠静脈を通じて右心房に戻ってきます)経由で左心室表面に留置します。心臓のギクシャクした動きは左心室と右心室の動きのタイミングが悪いことが原因で起こるため、左心室にも刺激を送ってバランスを整えるのです。ただし、全ての心不全の原因がこのギクシャクとした動きという訳ではありません。この治療法が用いられるのはごく一部の心不全に対してのみです。
除脈治療用ペースメーカーでは右心房と右心室にリードを設置し、心臓を動かす電気信号を送ります。両心室ペースメーカーはさらに左心室にもリードを設置、右心室と左心室のバラバラな動きを整えて、心臓のポンプ機能を改善します。
写真提供:ボストン・サイエンティフィックジャパン株式会社、日本メドトロニック株式会社