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両側上腕骨病的骨折(多発性骨髄腫)症例

両側上腕骨病的骨折(多発性骨髄腫)症例(増井)

症例 76歳、男性
XP 右上腕骨骨幹部に骨破壊像と病的骨折を認める
治療計画
  • 生検術
  • 各種腫瘍マーカー
  • 頚部~骨盤造影CT
確定診断/治療計画
  • 病理診断:多発性骨髄腫
  • 腫瘍マーカー:IL-2レセプター536U/ml 、M蛋白/IgG-κ型
  • 血液内科依頼:全身化学療法
  • 局所治療:上腕骨硬性装具(+放射線照射)
治療経過
  • 血液内科での全身化学療法前に家族の頭にぶつかり左上腕骨遠位端病的骨折を併発、右上腕骨骨幹部病的骨折部には仮骨形成を認める
  • まずは全身治療を優先して右上腕骨骨幹部病的骨折・硬性装具、左上腕骨遠位端病的骨折・上腕手尖ギプスシーネ固定による保存治療
  • 化学療法を開始の上で治療効果、白血球の立ち上がりをみて左上腕骨遠位端病的骨折に対して観血的整復固定術(利き手:左、長期間の上腕手尖ギプスシーネ固定:関節拘縮、筋力低下)
  • 利き手を使えるようにするため、化学療法5週目に左上腕骨遠位端病的骨折に対して手術を施行
術前レントゲン
術前計画
  • 約1cmの短縮転位あるが、ある程度の短縮は許容して骨折部を架橋固定
  • 遠位骨片の固定性を上げるためPHILOSを反転して施行して使用
  • 治療に反応すれば骨癒合
術中・後経過
  • 出血量: 266ml
  • 手術時間:1時間19分
  • リハビリ:術後2日自他動運動
術直後X線
術後2か月時X線像 両側上腕骨病的骨折部に良好な仮骨形成を認めている
ポイント 1:転移性骨腫瘍
  • 悪性骨腫瘍の内で最も頻度の高い
  • ひとたび骨折を起こすと痛みによる機能障害が大きく、ADL上非常に問題になる
  • 原発巣のコントロール状態、全身状態、生命予後、重大な転移巣や重篤な合併症の有無などによる患者の全身的な評価と骨折の危険性などを考慮して治療方法を決定する
2:姑息的手術
  • 全身状態が不良、生命予後が3か月以下
  • 髄内釘固定や創外固定
  • 髄内釘固定:初期固定力は強固であるが病巣を広げる危険
  • 創外固定:初期固定力が髄内釘固定に劣るものの病巣部には無侵襲
  • 生命予後が3か月以上
  • 病巣部を広範に拡大掻爬後に内固定と抗癌剤を混入したセメント充填術
3:治癒的手術
  • 生命予後:3か月以上
  • 広範切除術
  • 再建方法:人工骨頭置換術、人工関節置換術、Spacerやセメントを用いた髄内釘固定など
4:放射線照射
  • 骨折予防、除痛、麻痺治療(発症から48時間以内)
  • 術前/術後放射線照射
  • 分割照射30Gy/10回、20Gy/5回、単回照射8Gy/1回
  • 創縫合不全、皮膚障害、感染、壊死、骨癒合不全
  • 術中放射線照射
  • 合併症は少ないが、施設が限られる
5:骨修飾薬
  • ビスフォスフォネート:ゾレドロン酸
  • 抗RANKL抗体
  • 骨関連事象(骨への手術、病的骨折、脊髄麻痺)の減少
  • 効果大:肺癌、乳癌、前立腺癌、多発性骨髄腫
  • 効果少:消化器癌