専門医療センター

大腿骨頚基部骨折術後・骨頭下骨折症例

大腿骨頚基部骨折術後・骨頭下骨折症例(増井)

症例 85歳、女性
当院で大腿骨頚基部骨折に対して観血的整復固定術を施行
受傷時レントゲン
術後1・4か月時のレントゲン

ラグスクリュー(赤線)
術後7か月時のレントゲン

*骨頭下骨折と骨折部を中心に骨形成を認める
*ラグスクリューの骨頭穿破、臼蓋破壊を認める

*頚部骨髄が空虚(赤矢印)で、頚部前方骨皮質に骨折(黄矢印)を認める
*γtype femoral nailの刺入位置(青丸)

健側Ward三角部CT値平均:-48.94HU
骨頭骨折の原因
  • 高齢に伴う骨脆弱性
  • 頚部骨髄が空虚なことから、ラグスクリュー方向の軸圧により圧潰
  • 境界部にストレスが集中
  • 頚部前方骨皮質に骨折を認め、γtype femoral nailがやや後方から刺入されていることから、近位骨片がやや不安定となり境界部へのストレスが増加
  • 骨頭への血流低下
術後直後レントゲン
術中・後経過
  • 出血量:370ml
  • 手術時間:2時間3分
術後レントゲン
今後の対応
  • 荷重時期を遅らせる
  • 頚部骨髄内へ人工骨(αTCP等)の充填
  • 頚部前方骨皮質に骨折を認める際は後方骨皮質を損傷しないように、γtype femoral nailは大転子頂部やや外側から挿入するか人工骨頭置換術を選択

類似症例提示

症例 86歳、女性
受傷時レントゲン
*頚部骨髄が空虚(赤矢印)で、上・前方骨皮質(黄矢印)は残っている。頚基部骨折で頚部骨髄が空虚な症例は骨頭内の骨梁(2cm程度)に固定性が依存している。クラウンリーマー挿入時に上・前方骨皮質(黄矢印)を破壊するとより不安定になる可能性がある。
*γtype femoral nailの刺入位置(青丸)
*ラグスクリュー挿入方向(青線)

*上・前方骨皮質(黄矢印)を破壊しないようにやや外側からガイドピンを挿入する。

*クラインリーマー挿入時も上方骨皮質(黄矢印)を破壊しないように注意する。


*ラグスクリュー挿入後、圧迫を加える。

*上方骨皮質(黄矢印)はネイルに接触、前方骨皮質(赤矢印)は残っている。
術後直後レントゲン
術中・後経過
  • 出血量:40ml
  • 手術時間:24分
ポイント *頚基部骨折で頚部骨髄が空虚な症例は骨頭内の骨梁(2cm程度)に固定性が依存している。
*クラウンリーマー挿入時に上・前方骨皮質を破壊するとより不安定になる可能性がある。
*上・前方骨皮質を破壊しないようにやや外側からガイドピンを挿入する。
*クラインリーマー挿入時も上方骨皮質を破壊しないように注意し、ラグスクリュー挿入後に圧迫を加える。