専門医療センター

大腿骨顆上骨折症例

大腿骨顆上骨折(佐藤)

80代後半の女性。自転車走行中に車に接触し転倒。
PH)糖尿病(未治療)。入院時A1c(NGSP) 7.2
XP、CTで大腿骨顆上骨折AO33 C1。外側顆関節内骨片あり、外側に約15mmの嵌入による外反変形あり。翌日に骨接合術施行。

仰臥位、イメージ下に非観血的にアライメントを整復した。Lateral parapatellar approach 滑液包と浅層Fasciaを連続的に外側へ剥離し関節包を露出。関節包を切開し、膝蓋下脂肪体を膝蓋骨と併せて内側移動し、骨折部と外側顆関節内骨片を確認した。
イメージ下に外側を嵌入させたまま内反を加えることで内側も嵌入させ、外反変形を矯正した。Synthes Distal femurを外側に、Proximal lateral tibiaを前内側へ設置し、プレート同士を骨鉗子で把持して大腿骨に圧着させながらスクリュー固定を行った

経過:後療法は、可動域訓練制限なく、4週まで接地歩行、4週以降から部分荷重を検討予定とした。4週間弱の時点で転院となった。転院前最終診察時、屈曲115度、進展0度、Pick up 歩行器で20mの歩行が可能であった。

考察

高齢者大腿骨骨折は、早期離床、リハビリテーションが特に要求される。術後のリハビリを妨げる因子として、感染症や偽関節、血栓症などが挙げられる。本症例は15mmの外反嵌入があり、これを整復すれば骨欠損が生じることが予測された。自家骨移植を行ったとしてもInterfragmentary movementは確実に増大し、骨癒合に不利であると考えられた。糖尿病の合併もあり、骨癒合遷延リスクは高いと考えたことから、嵌入させたまま内固定を行った。

顆上骨折術後の偽関節に関する過去の報告を検討する。
Markmillerらは39例の検討(20例のプレートと、19例の髄内釘)の自家の結果とともに、過去の報告をreviewしており、プレート例は0~6.3%の偽関節率であった。

Henderson、ChristopherらもReviewを行い、癒合障害は0~32%発生したと報告している。

また、Christopherは偽関節例と癒合群を比較し、AO分類A1,A2,C1例であっても、偽関節率は21%であったと述べており、決して顆上骨折は癒合しやすい骨折ではないことがわかる。確実な骨癒合を目指し、本方法のように短縮させたまま固定する方法は適切であると考えた。

機能予後

骨折治療の成書であるRockwoodには、術後4週以内に屈曲90度以上を目指すべきであると述べている。Hoffmanらは243例の顆上骨折の後ろ向きコホートでは、75%の患者が屈曲95度以上で許容範囲であったと報告している。また、Pritchettのスコア(下記)では、Excellentが20.8%、Goodが27.4%、Fairが45.3%、Poorが6.6%であったと報告している。

本症例では4週弱で屈曲115度を獲得しており、この時点では経過良好であると考えられる。

結語:AO33 C1骨折に対してLCPによるDouble platingを行った。術後3週の時点ではインプラントトラブルや感染は認めなかった。

参考文献

Markmiller M, Konrad G, Sudkamp N: Femur-LISS and distal femoral nail for fixation of distal femoral fractures: are there differences in outcome and complications? Clin Orthop Relat Res 2004, 426:252–257.

Henderson CE, Kuhl LL, Fitzpatrick DC et al: Locking plates for distal femur fractures: is there a problem with fracture healing?; J Orthop Trauma. 2011 Feb;25 Suppl 1:S8-14.

Henderson CE, Lujan TJ, Kuhl LL et al: 2010 mid-America Orthopaedic Association Physician in Training Award: healing complications are common after locked plating for distal femur fractures; Clin Orthop Relat Res. 2011 Jun;469(6):1757-65.

Hoffmann MF, Jones CB, Sietsema DL et al: Clinical outcomes of locked plating of distal femoral fractures in a retrospective cohort. J Orthop Surg Res. 2013 Nov 27;8:43