末梢動脈疾患
末梢動脈疾患とは
末梢動脈疾患(まっしょうどうみゃくしっかん)は、主に足の血管が動脈硬化によって硬く、狭くなることで血流が悪くなる病気です。心臓や脳の動脈硬化と同様に、血管の壁にコレステロールなどが溜まることが引き金となります。血流が不足すると、足の筋肉や組織に必要な酸素や栄養が届かなくなり、様々な症状を引き起こします。特に下肢の動脈に起こることが多いのが特徴です。
末梢動脈疾患は決して珍しい病気ではありません。特に高齢化に伴い患者数は増加傾向にあります。50代から徐々に増え始め、60代から70代で発症のピークを迎えることが多いとされています。しかし、生活習慣によってはより若い世代でも発症する可能性があるため、年齢に関わらず注意が必要な病気と言えるでしょう。
※最初に読み仮名をふる
※可能であれば、分かりやすい図解を挿入いただくことで、ユーザーの理解も深まります。
参考:
症状
足の冷えやしびれを感じる
末梢動脈疾患の最も初期のサインとして、足の冷えやしびれが挙げられます。血流が悪くなることで、足先の体温が維持しにくくなるために起こる症状です。特に他の人よりも足が冷たいと感じたり、正座をしていないのに足がしびれる感覚があったりする場合は注意が必要です。多くの人が年のせいや冷え性と見過ごしがちです。
歩くと足が痛み、休むと治まる
この病気に特徴的な症状が「間歇性跛行(かんけつせいはこう)」です。一定の距離を歩くと、ふくらはぎやお尻、太ももなどに締め付けられるような痛みやだるさを感じ、少し休むと症状が和らぎ、また歩けるようになります。これは、歩行によって筋肉が必要とする血液を、狭くなった血管が十分に供給できないために起こります。
足の色が悪く見える
血行不良が続くと、足の皮膚の色にも変化が現れることがあります。健康な足はピンク色をしていますが、血流が悪いと青白く見えたり、紫色っぽくなったりします。特に足を心臓より高い位置に上げたときに白くなり、下げると赤紫色になる場合は、重症化しているサインの可能性があります。左右の足の色を比べてみるのも一つの方法です。
足の傷が治りにくい
血流は、傷を治すために必要な酸素や栄養素を運ぶ重要な役割を担っています。そのため、末梢動脈疾患によって血流が悪くなると、靴擦れなどのささいな傷や水虫が治りにくくなります。なかなか治らない傷がある場合は、単なる傷として放置せず、血行障害の可能性を疑うことが大切です。
原因
喫煙
末梢動脈疾患の最も大きな原因は喫煙です。タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させて血流を悪くし、一酸化炭素は血管の内壁を傷つけて動脈硬化を強力に進行させます。喫煙者は非喫煙者に比べて発症リスクが数倍高まると言われており、治療を行う上でも禁煙は絶対的な条件となります。
生活習慣病
糖尿病、高血圧、脂質異常症(高コレステロール血症)といった生活習慣病は、動脈硬化を進行させる大きな要因です。血糖値や血圧、コレステロール値が高い状態が続くと、血管の壁が傷つきやすくなり、動脈硬化が進展します。これらの病気を抱えている方は、特に末梢動脈疾患を発症するリスクが高いため注意が必要です。
加齢による血管の老化
年齢を重ねること自体も、末梢動脈疾患の原因の一つです。血管も他の臓器と同じように老化し、弾力性が失われて硬くなっていきます。これに長年の生活習慣の影響が加わることで、動脈硬化が進行しやすくなります。そのため、高齢になるほど発症のリスクは自然と高まっていきます。
放置が招く深刻なリスク
安静にしていても足が痛む
病気が進行すると、歩いている時だけでなく、じっと安静にしている時や夜寝ている時にも足に激しい痛みが現れるようになります(安静時痛)。これは、筋肉が活動していない状態でも、組織を維持するための最低限の血液すら供給できなくなっている危険なサインです。痛みで睡眠が妨げられることも少なくありません。
足に潰瘍や壊死が起こる
さらに重症化すると、血流が極端に悪化した部分の皮膚が傷つきやすくなり、治らない潰瘍(かいよう)ができます。最終的には組織が死んでしまう壊死(えし)に至ることもあります。足の指先などが黒く変色し、感染症を引き起こす原因にもなります。この状態を「重症下肢虚血(じゅうしょうかしきょけつ)」と呼びます。
足の切断や生命の危険性
壊死が広がり、感染が制御できなくなると、生命を守るために足の切断を余儀なくされる場合があります。また、足の動脈硬化が起きているということは、心臓や脳など全身の血管でも同様に動脈硬化が進行している可能性が高いことを示します。そのため、心筋梗塞や脳梗塞といった命に関わる病気を発症するリスクも非常に高い状態であることが推測されます。
検査・診断方法
ABI検査
末梢動脈疾患の診断で基本となるのがABI(足関節上腕血圧比)検査です。横になった状態で両腕と両足首の血圧を同時に測定し、その比率を計算します。腕の血圧よりも足首の血圧が低い場合、足の血管が狭くなっている可能性が高いと判断されます。痛みもなく、数分で終わる簡単な検査です。
超音波検査
超音波(エコー)検査では、血管に超音波を当てて、その跳ね返りを画像化することで、血管の壁の厚さや狭くなっている場所、血流の速さなどを直接観察することができます。体に負担のない検査で、動脈硬化の程度をより詳しく評価するために行われます。
CTやMRIによる精密検査
より詳細な情報が必要な場合や、カテーテル治療、手術を検討する際には、CTを用いた血管造影検査が行われます。造影剤を注射して血管の立体的な画像を撮影することで、どの血管が、どの程度、どのくらいの長さにわたって狭くなったり詰まったりしているのかを正確に把握することができます。
治療法
・運動療法
末梢動脈疾患の治療の基本は、薬物療法と並行して行われる運動療法です。痛みが出ない範囲でウォーキングなどを行うことで、血流を改善し、新しい血液の通り道(側副血行路)の発達を促す効果が期待できます。医師の指導のもと、無理のない範囲で継続することが重要です。
・薬物療法
薬物療法では、血栓ができるのを防ぎ血液を固まりにくくする抗血小板薬や、血管を広げて血流を改善する血管拡張薬などが用いられます。また、原因となる高血圧や脂質異常症、糖尿病などをコントロールするための薬も併用されます。これらの薬は病気の進行を抑えるために重要な役割を果たします。
・カテーテル治療
カテーテル治療(血管内治療)は、足の付け根などからカテーテルと呼ばれる細い管を血管内に挿入し、狭くなった部分を内側から広げる治療法です。先端に風船(バルーン)のついたカテーテルで血管を広げたり、ステントという金属の筒を留置して血管を支えたりします。体への負担が少ないのが特徴です。
・バイパス手術
血管の狭窄や閉塞が広範囲にわたる場合や、カテーテル治療が困難な場合には、バイパス手術が選択されます。これは、狭くなった血管を迂回する新しい血液の通り道(バイパス)を、人工血管や自分自身の静脈を使って作成する外科手術です。確実な血流の再建が期待できます。
<H2>日常生活で心がけるべきこと
・何よりもまず禁煙を徹底
末梢動脈疾患の治療と予防において、禁煙は最も重要です。いくら良い治療を受けても、喫煙を続けていては病状の悪化は避けられません。自力での禁煙が難しい場合は、禁煙外来などで専門家のサポートを受けることを強く推奨します。治療の第一歩は禁煙から始まります。
・バランスの取れた食事
動脈硬化の原因となる高血圧や脂質異常症を改善するため、食生活の見直しが不可欠です。塩分や動物性脂肪の多い食事を控え、野菜や魚を中心としたバランスの良い食事を心がけましょう。特に、塩分の摂りすぎは血圧を上昇させるため、薄味を基本とすることが大切です。
・毎日こまめに足を観察する
フットケアは、重症化を防ぐために非常に重要です。毎日お風呂の際などに、足に傷や靴擦れ、色の変化、水虫などがないか、自分の目でよく観察する習慣をつけましょう。感覚が鈍くなっていることもあるため、気づかないうちにできた小さな傷が重篤な潰瘍に発展するのを防ぎます。
・足を清潔に保ち保湿する
足を清潔に保つことも大切です。毎日、石鹸を使って指の間まで優しく洗い、よく乾かしてください。また、乾燥は皮膚のバリア機能を低下させ、傷つきやすくなる原因になります。入浴後などには、保湿クリームを塗って乾燥を防ぎ、皮膚を柔らかく保つように心がけましょう。
<H2>医師からのコメント
末梢動脈疾患は何科を受診すればよいかというと、




