心房細動
心房細動とは
心房細動(しんぼうさいどう)は不整脈の一種で、心房と呼ばれる心臓内の部屋が小刻みに震えたようになり、脈が乱れてうまく働かなくなってしまう病気です。
現在、日本国内で100万人以上の患者が居ますが、診断がされていない人を含めると200万人以上になるとも言われています。患者の数が多く、国民病と言っても過言ではありません。
体に血液が十分に行き渡らないため、息切れやめまい、疲労感などが激しく、日常生活に支障の出る方が居る一方で、罹患している方の40%は自覚症状がないという報告もあり、無症状であっても注意が必要です。
心房細動の影響
- 動悸症状で行動が制限されてしまう
- 心臓自体がへばってしまい、いわゆる心不全に陥る危険がある
- 認知症のリスクが高くなる
- 脳梗塞(心原性脳塞栓症)を発症するリスクが高くなるため、抗凝固薬(血液サラサラの薬)を飲み続けなければならない。
心房細動が原因となる心原性脳塞栓症
心原性脳塞栓症の発生メカニズム
心房細動により血液の流れが悪くなると、心臓内の「左心耳(さしんじ)」という場所に血栓が発生しやすくなります。その血栓が血流によって運ばれ、脳の動脈を詰まらせるとそこから先の血流が途絶えて脳梗塞となります。

心原性脳塞栓症と他の脳梗塞との違い
脳の末梢の細い血管が詰まるラグナ梗塞や脳血管の動脈硬化が原因となるアテローム血栓性脳梗塞に対し、心原生脳塞栓症は原因となる血栓がより大きいことが特徴といえます。末梢に至る前の太い血管が詰まるので損傷を受ける脳の範囲が広くなる傾向にあり(ノックアウト型脳梗塞)、より重症となります。
左心耳
「耳」のような形状で飛び出していて、特に血流低下の影響を受けやすい。
心臓内で出来る血栓の約90%~95%はここで発生すると言われています。
そのため、左心耳を閉鎖することで心房細動による血栓の形成を予防できます。

原因について
心房細動を含むすべての不整脈は心臓を動かす電気信号の異常によるものです。電気信号の異常を引き起こす原因は複雑であり、複数の要因が組み合わさって発症することがほとんどです。
主な要因
- 加齢
- 高血圧
- 心臓病(弁膜症・心筋症・心筋梗塞・心不全など)
- 糖尿病
- 甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)
- 肥満(メタボリックシンドローム含む)
- 睡眠時無呼吸症候群
- 慢性腎臓病
- 生活習慣(飲酒・喫煙・ストレス・過労・睡眠不足・カフェインの過剰摂取など)
- 遺伝素因
症状について
代表的な自覚症状は以下の通りです。前述の通り無症状の方も多くいますが、無症状の場合でも脳梗塞のリスクが存在することには注意が必要です。
代表的な症状
- 動悸
- 息切れ
- 胸部の不快感・痛み
- めまい・立ちくらみ
- 倦怠感・疲労感
心房細動の発作が起きたら
医師から発作が起きた際に飲むお薬を処方されている方は指示通りに服用しましょう。そのうえでなるべく安静にしてください。歩行、運転などしている場合は安全な場所にとまって、転倒や事故を避けるようにしましょう。また、強いめまいや失神しそうになるといった症状があれば、早めに受診することをおすすめします。
検査について
心電図検査
一般的な心電図検査以外に、発作型の心房細動を捉えるための24時間心電図検査(ホルター心電図検査)を実施する場合もあります。

その他の検査
- 心エコー検査
- 血液検査
- 胸部X線検査
治療について
心房細動の治療は、不整脈による症状の改善、脳梗塞の予防、心不全の予防を目的として実施します。
薬物療法
症状の改善を目的として心房細動の発生を抑える抗不整脈薬や心拍数を適正に調整する薬が使われます。脳梗塞予防のために、血栓の形成を抑制するための抗凝固薬(血液サラサラの薬)が用いられます。
カテーテルアブレーション
心房細動を引き起こす異常な電気信号の発生源を高周波で焼く、もしくは凍らせて電気的に遮断することで洞調律(正常な心臓のリズム)の回復を目指します。根治的な治療法として、特に薬物治療が効かない場合やお薬の副作用が強い場合に選択されます。治療は足の付け根などから挿入するカテーテルを通じて行なわれます。
WATCHMAN™治療
心原性脳塞栓症の予防を目的として行われる治療です。カテーテルといわれる細い管を使用して、足の付け根などから心臓にアプローチする治療法で、WATCHMAN™と呼ばれるデバイスを利用します。このデバイスを血栓が生成される部位である左心耳の入口に留置して、左心耳を閉鎖します。開胸や一時的に心臓を止める処置は行いませんので、身体への負担が軽く、年齢や合併症等の理由から内視鏡下心房細動手術などの外科手術が難しい方にも治療が可能です。

WATCHMAN FLX™ pro
内視鏡下心房細動手術(ウルフ-オオツカ法)
心房細動を治療するとともに、心房細動が原因となる脳梗塞を予防する手術法です。全身麻酔下で完全内視鏡により行われるこの手術は、開発者である医師2名の名前から「ウルフ-オオツカ法」とも呼ばれます。手術では、左心耳を安全・迅速かつ完全に閉鎖し、心臓の外側からアブレーション術(外科的焼灼術)で乱れた脈を治療します。 ※患者様の症状や状態により左心耳閉鎖のみを行うこともあります。

日常生活における注意について
- 塩分制限:心臓への負担をおさえるために塩分制限が必要です。1日あたり6gが目安となります。
- 飲酒と禁煙:飲酒は適量を心がけ、喫煙されている方は禁煙しましょう。十分な睡眠をとり、バランスの良い食事を心がけることも大切です。
- カフェイン摂取:過剰なカフェイン摂取は避けましょう。コーヒー、紅茶、エナジードリンクなどの摂取量に注意しましょう。
- 水分補給:暑い季節や入浴後は脱水にならないように、水分の摂取を心がけましょう。
- 運動習慣:適度な運動を継続しましょう。プールでの水中ウォーキングなどの有酸素運動がおすすめです。
- 肥満の防止:適正体重を維持し肥満にならないようにしましょう。
- 服薬管理:お薬を出されている方は医師の指示通りに服用しましょう。
- 抗凝固薬:抗凝固薬(血液サラサラの薬)を服用されている方は出血しやすく止まりにくい傾向にあります。ケガをすることがないように十分に気を付けていただくと共に、出血が止まらない場合は医療機関に相談しましょう。歯科や眼科を受診する際はご自身がこれらのお薬を服用していることを伝えましょう。
- 基礎疾患について:糖尿病・高血圧・脂質異常症などの基礎疾患がある方は適切な管理、コントロールを続けましょう。
- 定期的な診察:指示されたスケジュールで定期的に受診し、医師の診察を受けましょう。
医師からのメッセージ
心房細動は脳梗塞や心不全のリスクを高める見過ごせない病気です。
医師との連携のもと適切な治療を受けることをおすすめします。
千葉西総合病院は服薬による管理から、カテーテルアブレーションやWATCHMAN(ウォッチマン)、外科的手術など、様々な治療に対応できる施設です。気になる症状があればまずは当院循環器内科をご受診ください。

SHDセンター長
桃原哲也
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この記事を書いた医師
桃原 哲也(とうばる てつや)
千葉西総合病院 副院長
循環器内科主任診療部長・SHDセンター長
(画像提供:アボットメディカルジャパン合同会社)