新型コロナウィルスに罹患した患者様を受入れるための独立病棟である伝染性感染症病棟(C.I.W=Contagious Infection Ward)が完成しました。発案、設計、建設全てをわずか3週間余りという短期間で行うことができました。
突貫工事を完遂して頂いた熊谷組、郡リースの両社には厚く御礼申し上げます。
病院長からの挨拶
2020年5月12日、現在日本のみならず世界中を脅かす新型コロナウィルスに罹患した患者様専用の独立病棟(C.I.W)をオープンしました。その意義について、ご説明したいと思います。
独立、隔絶した伝染性感染症病棟建設の意義
①「高機能を有する別棟で、容体の悪化に対応し、高度の集中治療も行えます。」
新型コロナウィルスに罹患した患者様を責任もって診療し、症状の急激な悪化、重症化に即座に対応し、人工呼吸器、ECMO(人工肺)等、高度な治療にも速やかに施行できる、高機能病院を目指します。最近でも若い力士が不幸にも帰らぬ人となってしまいましたが、新型コロナウィルスは、感染後、無症状もしくは軽症であっても急激に悪化し、呼吸困難に陥ることが稀ではないと言われています。自宅やホテルで療養している場合の他、一般病院に入院している場合でも、刻一刻と悪化していく事態になれば、このような高度の集中治療を行える病院に入院もしくは転院する必要があります。その際スムーズに受入れ先が見つかればよいですが、なかなか決まらない場合もあるかと思います。そこで、同一施設で、症状の程度を問わず、経過観察から高度の治療まで行えることが、生命を守るという観点からベストであると考えました。 そして、その施設は院内感染の可能性を限りなく0に抑え、本来の病院機能を損なわないように出入口も全く別な、別棟であることが重要です。
②「新型コロナウィルスなどの感染力の高い病原体が全く存在しない、いわゆるホワイト・ホスピタルを目指します。心臓病、癌など他臓器の疾患を有する患者様の治療を、不安のない形で受けて頂けます。」
一般的に、心臓病や癌は、待っていて状態が良くなることはなく、悪化するか、あるいは良くても現状維持のままです。特に心臓の血管がつまっていることがわかっている狭心症の場合、時限爆弾を抱えているようなもので、放置した場合、新型コロナウィルスによって命を落とす確率よりも高い確率で、容態が悪化していくものと考えられます。そこで多くの患者様は心臓の手術や癌の治療を早く受けたいと思われるでしょうが、一方で「入院中に院内感染したら恐い」と考える方も少なくないでしょう。しかし、「全く安全」ということが確認できれば、待つ必要はありません。新型コロナウィルスが流行しているからといって、心臓や癌は遠慮してはくれません。いたずらに院内感染の可能性を過度に恐れるあまり、より生命に直結する疾患の治療が遅れては、本末転倒です。
③「通常の診療を妨げず、医療崩壊を防ぎます。」
当院は年間救急車受入れ数12,000台で、千葉県一、全国でもトップ10に入ります。当然新型コロナウィルス感染症の患者様も来院されます。「心臓の治療が得意だから、最初から発熱や肺炎の患者は診ない」というわけにはいきません。新型コロナウィルスの診療は社会的ニーズが大きく、病院の使命でもあります。発熱や肺炎の患者様の搬送を多数の病院が尻込みして断る、あるいは病床がなくて入院できない、という状況があれば、病院の存続意義にかかわります。一方、新型コロナウィルスの診療のために、通常の診療が妨げられては元も子もありません。必要ベッド数を確保しながら新型コロナウィルス対策と通常診療を平行して医療崩壊を防ぐには、このC.I.Wの建設が欠かせないと考えます。
以上、C.I.Wの建設意義について申し上げました。今後も医療を通した社会貢献を徹底したいと思います。
千葉西総合病院
病院長 三角 和雄
伝染性感染症病棟(C.I.W=Contagious Infection Ward)仕様
病床数
一般病床20床、HCU10床(計30床)
設備リスト
回診用X線撮影装置、ベッドサイドモニタ、心電計(標準12誘導)、緊急内視鏡、汎用超音波画像診断装置、携帯型血液ガス分析機、シリンジポンプ、輸液ポンプ、ドレナージ吸引装置、真空吸引器、人工呼吸器(病室番号1~4のみ)、血液浄化(病室番号1のみ)
ECG患者モニター、人工呼吸器
ナースステーション
シャワートイレ完備
病室にはテレビ、インターネット環境(WiFi)を整備
HCU10床(各ベッドにモニタ用カメラ付き)
C.I.W専用のCTを導入