整形外科

整形外科初期研修レジデント後記 井上 友輔

2013年6月、7月と2か月間整形外科を研修させて頂きました。今まで救急当直で骨折などの整形外科疾患に多く出会ってきましたが、そのつど教科書を読みながら対応するも本当に自分がやっていることが正しいのかどうか不安を感じておりました。整形外科研修中の目標として、少なくとも外科当直で困らない対応能力を身につけること、そして、整形外科的common diseases(高齢者に多い骨折など)については自信をもって初期対応できる力を身につけることとしました。2か月間のローテーション中は病棟管理、外来、手術に関わりました。週10~20件近くの手術があり、そのほぼ全てに参加させて頂きました。市中病院のため骨折手術が多いですが、他に人工関節・骨軟部腫瘍もあつかっています。部長の増井先生や非常勤で来られる先生方で腫瘍を専門にされている方が多く、そこは他の市中病院とは変わった点だと思われます。常勤の先生方は3人と少ないですが、非常勤の先生方まで合わせると10人以上になります。どの先生方も非常に社交的でまた教育的でした。後期研修医の先生もおり、学年が近いため分からないことを気にせずなんでも聞くことができました。2か月間と短い間でしたが、振り返ってみると自らの当初の目標は達成できたと思います。

平成24年度臨床研修医 井上 友輔

症例報告

今回、整形外科研修中にSyme切断を施行された患者さんを担当させて頂いた。Syme切断とは脛骨と腓骨を果上部で切断し強靭な踵部の皮膚を皮弁として用いる下肢切断方法である。下肢切断は他に骨盤、股関節、大腿、下腿、足部、趾などの切断場所が存在する。今回の研修では切断の適応、切断レベルの選択、義肢の選択などに関しても学ぶことができた。下肢切断に至る原因としては、末梢血管障害、外傷、感染、腫瘍、熱傷、凍傷などがあげられる。近年下肢切断の原因で多いのは糖尿病や動脈硬化症といった全身性疾患を背景としたものである。実際の周術期管理では臨床研修で内科を研修したことが役立つ場面が多々あった。

今回研修中に経験したのは、爪切り後に徐々に右第一趾の壊死が進行していった症例である。患者さんは透析をしており、糖尿病を既往に持っていたが右ABIは0.98、SPPは94mmHg(>30mmHg)と血行障害は軽度であった。よって右第一趾の壊死は虚血よりも糖尿病を背景とした感染が主な原因と考えられた。当初内科にて抗生剤投与は開始されていたが、一向に治癒する気配見せず、しだいに足部にまで感染徴候を認めるようになった。MRIのT2WIでは下腿の長母趾伸筋に高信号を認めており、同部にまで炎症が波及している可能性も示唆された。この時点で抗生剤による感染制御が難しいため切断が考慮された。SPPが保たれているため、感染部位よりもすぐ近位で切断すれば断端は創傷治癒すると考えられたが、実際は患者さんの術後の社会生活のことも考えて切断レベルを検討しなければならなかった。たとえば中足部切断をすると、術後内反尖足をきたしてしまい日常生活に影響がでてしまう可能性がある。本例では、下腿にまで感染が及んでいる恐れもあり、当初は下腿切断(BK)を第一に考えたが、患者さんの年齢が比較的若く活動性が高いため最終的にはSyme切断が選択された。これにより自宅内では義足なしでの自立歩行が可能となり生活レベルをできるだけ落とさないことが可能となる。感染が終焉せず、最終的に下腿切断(BK)になってしまうという恐れはまだ残っているが、本例から切断レベルをどこに決定するのかについて個々の患者さんの背景を総合的に考慮する必要があることを学ぶことができた。